仏教において、四十九日は、死後この世とあの世をさまよっていた故人が極楽浄土へ行けるかどうか決定される、重要な日とされています。
残された家族は、親戚や、故人と親しかった人たちを招いて四十九日法要を行ない、故人が無事に極楽浄土へと行けるように祈ります。
今回は、この四十九日法要の際に準備する「粗供養」(そくよう)について詳しく解説していきたいと思います。
目次
粗供養とは感謝の気持ちを込めたお礼の品物
「粗供養」とは、四十九日法要に限らず、葬儀や法要の参列者からいただいた供養に対して、施主(法要を行なう人)が感謝の気持ちを込めたお礼として用意する品物のことを言います。
また、「粗供養品」とも呼びます。
この呼び方は主に西日本で使用されることが多く、一部の地域では「祖供養」と書くこともあるようです。
品物に掛けるのし紙の表書きにも「粗供養」と記されます。
また、関西の一部の地域では、法要の参列者がほかの参列者に対して品物を持ち寄って、法要後にそれを分けて持ち帰るという風習があり、その際の品物についても「粗供養」と呼ぶ場合があるようです。
東日本では主に「香典返し」や「(法要の)引き出物」などと呼びますが、のし紙の表書きには「志」(こころざし)と記されることが多いです。
粗供養の準備ってどうすればいい?
四十九日法要の際の粗供養は、葬儀や法要に来てくれた参列者の供養に対してのお礼の気持ちとして、施主が用意します。
一家族に一つずつ用意しましょう。
品物自体はギフト店などに注文しますが、最近ではインターネットでも注文ができるようです。
四十九日法要を葬儀会社に任せている場合などは、そちらで用意してもらうことも可能です。
だいたい注文から一週間程度で用意してくれるようです。
品物を選ぶ際に気を付けたいこととしては、お祝い事とは違い仏事の引き出物になりますから、あとまで長く残ることのない、いわゆる「消えもの」を選ぶと良いでしょう。
具体的には、海苔やお茶、お菓子の詰め合わせ等の食品類が多いようですが、タオルや洗剤などの実用品が選ばれることもあります。
故人が好きだった食べ物を選ぶこともあるようです。
食品は賞味期限に注意して、なるべく個包装で日持ちのするものを選ぶようにしましょう。
いずれの場合も、持ち帰る人のことを考え、なるべくかさばらず、軽いものを選ぶと良いでしょう。
最近では持ち帰りやすく、好きなものを選んでもらえるということでカタログギフトも増えているようです。
避けたほうがいいものとしては、肉や魚などの生臭もの・酒や昆布などお祝い事で使われるもの・刃物を使って切るような食品(縁を切るとされ好まれない)などがあります。
また、商品券など、金額がはっきりわかってしまうようなものも避けたほうが良いでしょう。
四十九日法要における粗供養は、四十九日の法要に来て供養していただいたことに対してのお礼として一品用意しますが、この四十九日法要の際に、のちに詳しく述べる「忌明けの香典返し」も一緒にお渡しする場合はもう一品用意することが必要になります。
四十九日法要の分と、この忌明けの香典返しの分をまとめて一品にしてしまうと、たとえ高価なものであっても先方に伝わらず、どちらかの分のお返しを受け取っていないと解釈されることがあるからです。
粗供養の相場は2000〜5000円ほど
粗供養の準備として、どのようなものを選べばいいかお分かりいただけたかと思います。
では、粗供養の品物の相場はどのくらいになるのでしょうか。
四十九日法要に対しての粗供養であれば、身内以外の参列者は5000~10000円程度の香典を包むのが一般的とされていますので、その3分の1~半返し程度ということで2000~5000円程度の品物を用意することが多いようです。
この辺の風習は地域差もかなりありますので、身内の、できれば年長の方や、葬儀の時にお世話になった葬儀会社の方などに相談すると良いと思います。
身内と身内以外、または僧侶の分などで中身の違う粗供養品を用意する際は、持ち帰りの際に間違えることがないように印を付けておくと良いでしょう。
法要の際の会食の有無によって粗供養品の金額がかわったり、食事の代わりに酒と折詰弁当などを粗供養と一緒に渡す場合もあります。
会食がない場合は、粗供養品そのものにかける金額を増やすか、食事に相当する金額の「粗飯料」(そはんりょう)を粗供養品に付けるといった地域もあるようです。
この場合の粗飯料は現金でなく商品券などでお渡しすることが一般的です。
粗供養の種類は様々
「粗供養」は四十九日法要に限らず、葬儀や法要などの仏事の際に参列者からいただいた供養に対しての返礼品を指すため、どんな仏事でお返しするのかによって様々な種類があります。
葬儀当日の「会葬御礼品」(葬儀に参列していただいたことに対する御礼の品)として会葬礼状を添えて用意するものや、「香典返し」(いただいた香典に対する御礼の品)として用意するもの、その他法要のお返しとして贈るものなどがあります。
このどれもが「粗供養」(地域によっては「香典返し」や「引き出物」)になります。
状況によって、用意する品物の金額相場も変わってくるのです。
のしは必要?
ここでいう「のし」とは、品物の上に掛ける「掛け紙」のことを指しますが、「のし」とは本来、お祝い事に使う縁起の良い食べ物「熨斗」(のし)から来ており、昔は贈り物をする際にこの熨斗を贈答品に添えて贈られていたようです。
その風習が時代とともに簡素化され、熨斗を表した紋様を掛け紙に印刷したものが品物に掛けて贈られるようになり、これが「のし紙」として普及しました。
お祝い事に使用されるのし紙には、右上のあたりにこの「熨斗」を表した飾りが印刷されていて、この飾りのことを「のし」と呼びます。
そのため正確には、仏事において「のし」は使いません。
「のし」の入っていない仏事用の掛け紙を使います。
今では掛け紙そのもののことを「のし紙」と呼ぶことが一般的になっているため、ここでも「のし紙」と表記していきます。
さて、粗供養にのし紙が必要か、ということですが、のし紙を掛けてお渡しすることが一般的なマナーです。
これは、仏教において、故人が亡くなってから四十九日までの期間を「中陰」(ちゅういん)と呼び、四十九日はその中陰が満ちる日ということで「満中陰」(まんちゅういん)とも呼ばれるからです。
仏教において、故人は亡くなってすぐあの世に行くのではなく、いくつかの段階を経て最終的に極楽浄土に行けるかどうかが四十九日目に閻魔大王によって判断されると考えられており、この日を大きな区切りとしています。
遺族にとってはこの日が忌明けとなり、慶事を避けて生活していた喪に服す期間を終えて日常の生活に戻っていきます。
西日本では、この忌明けの香典返しでお渡しする粗供養の表書きに「満中陰志」と書くことが一般的で、それ以外の葬儀当日や四十九日以外の法要では「粗供養」とされることが多いようです。
また、すべての仏事の返礼品においての表書きは「志」でも問題なく、東日本ではこちらを使用するのが一般的です。
のし紙の水引きは、白と黒の結びきりという形が一般的ですが、西日本では黄と白の結び切りを使う場合もあるようです。
下段に施主の姓を書きますが、その際は薄墨ではなく黒い墨で書きます。
のし紙の掛けかたは「内のし」と「外のし」の2種類があります。
「内のし」は品物の化粧箱にのしを掛け、その上から包装紙で包む(のしは見えない)方法。
「外のし」は品物を包装紙で包み、その上からのしを掛ける(のしは見える)という方法です。
仏事はお祝い事ではないので控えめにするという意味で「内のし」が一般的のようですが、地域によっては外のしで掛ける場合もあるため、品物を依頼したお店などに確認すると良いでしょう。
挨拶状は場合によっては必要になります
四十九日法要(満中陰法要とも呼ばれる)の場合、無事に忌明けを迎えられたというご挨拶と、お世話になったことに対してお礼の意味を込めて、挨拶状を用意することがあります。
粗供養品を直接渡す場合はその場でご挨拶とお礼を伝えることができるため、必ず必要というものではありません。
しかし、直接会うことができず、粗供養品を送る場合は、挨拶状と一緒に送ると良いでしょう。
粗供養品を注文したギフト店や葬儀会社などで挨拶状の作成も受け付けているところがほとんどですので、必要な場合は問い合わせましょう。
挨拶状にも、和紙でできた高級感のあるものや、はがき程度のサイズのカードタイプなどの種類があります。
必要に応じて選びましょう。
お寺への粗供養は参列者と同じものでいい?
参列者にお渡しする粗供養はどのようなものなのか、お分かりいただけたかと思います。
では、お寺にお渡しする場合の粗供養は、同じもので良いのでしょうか。
一般的には、参列者へ用意したものと同じものを、お寺へもお渡しすることが多いようです。
しかしこの点にも地域によって違いが大きく、お寺へはお布施のみで粗供養は用意しない、というところもあるようです。
こういった点についても、葬儀社や粗供養を手配したギフト店、身内の年長者などに確認して、その地域でのやり方と同じようにすると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
四十九日で準備する粗供養の相場や種類を紹介!挨拶状や贈る時期についても!
について解説させていただきました。
一口に粗供養と言っても、仏事の様々な場面で使用され、それぞれに違った意味合いを持つということがお分かりいただけたかと思います。
四十九日においての粗供養も、どのような意味を持ち、どんな品物がふさわしいのかお分かりいただけたでしょうか。
四十九日は葬儀の次に大きな区切りとなる日ですので、故人のためにも、参列してくださった方のためにも、失礼のないようしっかり準備しておけると良いですね。