「生前整理」と聞くと、多くの人が「それはもっと年を重ねてからするもの」と思いがちです。
特に40代であれば、子育てや仕事に追われ、「自分のことはまだまだ先でいい」と感じている方も少なくありません。
でも、ちょっと待ってください。
実は今、40代のうちから生前整理を始める人が増えているのをご存じですか?
なぜなら、40代は心も体もまだ余裕があり、人生の節目を迎えるタイミングでもあるからです。
親の介護や相続、転職や子の独立といった“先の備え”を考え始めるこの時期こそ、自分の生前整理に目を向けておくことがとても重要になってきます。
この記事では、
ポイント
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生前整理ってどんなことをするの?
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40代で始めても早すぎないの?
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実際に何をすればいいの?
といった疑問にわかりやすくお答えしながら、「今」だからこそできる生前整理の進め方をご紹介していきます。
目次
そもそも生前整理とは?
「生前整理」とは、自分が元気なうちに、身の回りの物や財産、情報、人間関係などを整理しておくことを指します。
将来、万が一のことがあったときに備え、自分の意思で、
・必要なもの
・残したいもの
・伝えたいこと」
を整えておく――。
それが、生前整理の本来の目的です。
よく似た言葉に「遺品整理」がありますが、こちらは亡くなった後に遺族が行う整理であり、タイミングも立場も異なります。
一方、生前整理は自分で決断できる今だからこそできる、前向きな準備と言えるでしょう。
近年では「終活(しゅうかつ)」という言葉が一般化してきました。
生前整理もその一部として捉えられることが多く、
財産の整理・デジタル遺産の管理・エンディングノートの記入など、さまざまな行動が含まれます。
特別な知識がなくても始められる反面、やり始めると意外に奥が深く、考えることも多いのが生前整理。
だからこそ、体力も判断力もある40代から始めておくことで、余裕を持って、自分らしい選択ができるのです。
40代で生前整理は早すぎる?

そんなふうに思っている方も多いかもしれません。
確かに、70代や80代で始める方も多いですが、実際に生前整理を終えた方の中には「もっと早くやっておけばよかった」という声がとても多いのです。
では、なぜ40代がベストタイミングなのでしょうか?
生前整理では、持ち物の処分や契約の見直し、財産の整理など、「決断」や「手続き」が多く発生します。
高齢になってからだと、身体が思うように動かない、書類の管理が煩雑で億劫になる、といった問題も出てきがちです。
その点、40代はまだ判断力も体力も十分。
動けるうちに進めておくことで、後々の負担をぐっと減らすことができます。
また、40代は、人生の中でも大きな転換点が重なる時期です。
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親の介護や相続の問題が見えてくる
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子どもの進学や独立が始まる
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仕事や暮らしに「これからどうする?」と考える機会が増える
こうした場面に直面したとき、「自分自身の整理ができていないと、他人のことで手一杯になる」という声もよく聞かれます。
だからこそ、余裕のある今のうちに、自分のことを整えておくことが大切なのです。
突然の病気や事故――「まさか」は誰にでも起こり得ます。
そのとき、家族があなたの財産状況や契約内容を何も知らなかったらどうなるでしょうか。
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保険は?銀行口座は?
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スマホのロックが解除できない…
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通帳もカードも見つからない…
そんな状況で家族が困らないようにするには、あなた自身が情報をまとめておくことが最善の対策になります。
つまり、40代の生前整理は「早すぎる」どころか、
これからの人生をもっとラクに、もっと豊かに生きるための前向きな選択だと言えるのです。
40代のうちにやっておきたい生前整理の5つのこと
「生前整理」と聞くと、何か特別な準備や難しいことをイメージされるかもしれません。
けれど実際は、日常の中で少しずつ取り組めることばかり。
ここでは、40代のうちから始めておきたい現実的かつ効果的な5つのステップを詳しく紹介します。
① モノの整理(断捨離)
最も取りかかりやすいのが、身の回りにあるモノの整理です。
40代は、家族が増えたり子どもが成長したりと、暮らしのスタイルが大きく変わる時期。
それに伴って、知らないうちに「今は使っていない物」「いつのまにか増えた物」がどんどん積み重なっています。
例えば、
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着なくなったスーツやコート
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使っていないキッチン家電
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子どもが小さい頃に使っていたグッズ
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写真や書類、取扱説明書など
こうした今は必要ないけれど何となく残している物が、心の中のノイズになっていることもあります。
自分が今後どう暮らしたいかを考えながら、「必要」「保留」「手放す」の3分類に仕分けていくだけでも十分な生前整理になります。
② 財産関係の把握とリスト化
意外と後回しにされがちなのが、お金や契約まわりの情報整理です。
通帳・保険証券・不動産登記・年金情報・ローン返済…どれも普段あまり意識していないものばかりですが、もしもの時に家族が最も困るのがこの部分です。
ポイントは、「自分にしかわからない情報を見える化すること」。
たとえば、
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複数の口座に分散された預金(銀行名・支店名)
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加入している生命保険の内容と担当者名
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マイホームの名義やローン残高
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相続対象になりうる資産の所在(株・投資信託など)
これらを1冊の「財産ノート」やエンディングノートに記しておくだけでも、自分がいなくなった後の混乱を大幅に減らすことができます。
③ デジタル遺産の整理
スマートフォンやパソコンに残されたデジタルデータは、新しい時代の遺産とも言えます。
ログイン情報やデータの保存場所がわからなくなってしまうと、家族が写真やメール、契約情報にアクセスできなくなる恐れもあります。
整理しておきたい代表例として、
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SNSアカウント(Facebook/Instagram/Xなど)
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メールアドレスとパスワード
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写真データ(クラウドやスマホ)
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オンラインバンク/証券口座/仮想通貨の取引情報
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Amazonや楽天などの通販アカウント/定期購入履歴
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サブスク(月額課金サービス)
ノートやパスワード管理アプリを使って、「どこに」「どのような情報が」「どのように保管されているか」を記録しておくことで、家族が適切に処理できる環境を整えることができます。
④ 医療・介護に関する意思表示
病気や事故などで自分の意思を伝えられなくなったときに備え、「自分はどんな医療・介護を望むのか」を事前に明確にしておくことも大切です。
具体的には、
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延命治療を希望するかどうか
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認知症や寝たきりになった場合の介護方法
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入院・施設入居に対する考え
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誰に判断を託したいか(代理決定者)
これらは、急な出来事が起きた際に家族にとって非常に重要な判断の軸になります。
近年は「リビングウィル」や「尊厳死宣言書」など、法的な形で意思を残す方法も増えています。
紙に書くだけでも、気持ちはしっかりと伝わります。
⑤ 大切な人へのメッセージ
生前整理の中でも、精神的な意味でとても価値があるのが、「感謝の気持ちを伝えること」です。
人は、いざというときほど素直な言葉を伝えられなくなるもの。
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親に伝えたい「ありがとう」
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子どもに向けた「これからの人生のアドバイス」
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パートナーに伝えたい「感謝とねぎらい」
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離れている兄弟や友人への「温かい言葉」
形は手紙でも、音声でも、メモでもかまいません。
自分が大切にしてきた人たちへ想いを残すことは、生前整理を人とのつながりの確認という意味で深めてくれます。
生前整理を始めるメリット
「生前整理って、やらなきゃとは思うけど、正直ちょっと面倒そう……」
そう感じている方は決して少なくありません。
でも実は、生前整理を始めた人の多くが、「思ったより前向きな時間だった」「やってよかった」という声を残しています。
なぜなら生前整理は、不安を整理し、暮らしと心を整える行動だからです。
40代のうちから少しずつ始めておくことで、将来への安心はもちろん、今の生活にも大きなメリットが生まれます。
ここでは、具体的にどんな良いことがあるのかを、5つの視点から詳しく見ていきましょう。
① 気持ちがスッキリし、前向きになれる
「なんとなく気持ちが落ち着かない」
「日々に追われて余裕がない」
そんなふうに感じることはありませんか?
実は、心のザワつきの多くは、部屋や持ち物、人間関係など身の回りの情報や物が整理されていない状態から生まれることが多いのです。
生前整理を進めていく過程で、
「自分は何を大切にしているのか」
「もう手放していいものは何か」
に気づけるようになります。
そして、ひとつずつ整理されていくことで、心の中にスペースができ、思考もシンプルに、前向きになっていくのです。
これは、年齢を問わず「今の自分を整えたい」と感じているすべての人にとって、大きな価値となるでしょう。
② 家族への負担が軽くなる
もし突然の事故や病気で意思が伝えられなくなったとき――
あなたの家族は、どこから何を探せばいいかわかるでしょうか?
通帳はどこ?
保険の連絡先は?
スマホのロックは?
「全部自分の頭の中にある」状態は、いざというとき家族に大きな負担と混乱を残す結果につながります。
生前整理で情報をまとめておくことで、家族は
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大切な手続きにすぐ取りかかれる
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不要な探し物に時間を費やさない
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「本人の意思だった」と納得して対応できる
というように、悲しみの中でも落ち着いて行動ができるようになります。
これは、「愛情の伝え方のひとつ」として、生前整理が大きな意味を持つ理由でもあります。
③ 必要なものと不要なものの線引きができる
私たちは日々、モノや情報、予定、人間関係…とにかく多くのものに囲まれて生きています。
気づけば、「本当に必要なもの」と「なんとなく持ち続けているもの」が混在している状態に。
生前整理を始めると、まずこの棚卸しが自然とできるようになります。
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長年使っていないけれどなんとなくある物
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惰性で続けている習慣や契約
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すでに役割を終えた関係性や関心事
これらを見直すことで、生活の質も、心の軽さも、格段に変わります。
特に40代は、仕事も家族も忙しい時期。
いる・いらないを自分の基準で見極める力を育てることで、余計なストレスや情報に振り回されない、シンプルな人生の土台を作っていくことができます。
④ 自分自身の意志をきちんと残せる
延命治療は受けたい?受けたくない?
介護が必要になったら、どうしてほしい?
葬儀は?お墓は?相続はどうする?
こうしたテーマは、できれば元気なうちに考えておきたいものです。
しかし、多くの人は「まだ先のことだから」「なんとなく避けてしまう」と、後回しにしてしまいます。
生前整理では、こうした問いに自分のペースで向き合うことができるのが魅力です。
そして、「私はこうしてほしい」という意志を記しておくことで、いざというときも家族は迷わずに対応できます。
意志を残すという行動は、自分を大切にすること。
そして、家族との信頼関係を未来にもつなげていくための架け橋にもなるのです。
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⑤ 未来への不安が減り、今を大切にできる
「老後どうなるんだろう…」
「何かあったら家族に迷惑をかけるかも」
そんな漠然とした不安を抱えている人は、実はとても多いです。
ですが、その不安の正体は、多くの場合
「自分の状況がよくわかっていない」
「情報やモノが整理されていない」
「備えができていない」
という見えない混乱が原因になっています。
生前整理を始めると、今の自分の立ち位置が明確になります。
そして、必要な備えをひとつずつ整えることで、「これで大丈夫」という安心感が生まれます。
そうすると、気持ちは未来の不安から今この瞬間をどう生きるかへとシフトしていくのです。
生前整理は、不安から自由へ、視点を切り替えるための実践的な手段でもあるのです。
このように、生前整理のメリットは単なる準備にとどまりません。
「今を整えること」が、「未来を守ること」につながる――その実感を、ぜひ40代から味わってみてください。
まとめ|40代の生前整理は「早すぎる」ではなく「ちょうどいい」
生前整理というと、どこか終わりの準備という重たいイメージを持ってしまいがちです。
けれど実際は、これからの人生をより自分らしく、軽やかに生きるための整理でもあります。
40代という年齢は、まだまだ元気で働き盛り。
家庭・仕事・親のこと…さまざまな役割を担っている最中かもしれません。
だからこそ、あえて自分のことを整える時間をつくることが、これからの生活全体を支える土台になります。
今日から始められる生前整理の第一歩はこれ。
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不要な書類や衣類を1つ処分する
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預金口座や保険をメモにまとめてみる
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SNSのパスワードを一覧化する
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家族と1つだけ、将来について話してみる
こうした小さな一歩でも、確実に「備え」は前に進みます。
何も一気に完璧を目指す必要はありません。
今できることから始めてみることが何より大切です。
生前整理は、自分の人生を丁寧に振り返り、
これからをどう生きるかを考えるための、前向きな時間です。
そしてそれは、あなたの未来を守るだけでなく、
大切な人たちが悲しみの中で困らずに済むよう、そっと寄り添う優しさでもあります。
「まだ早いかな」と思っていた今こそが、実はベストタイミング。
40代から始める生前整理で、あなたのこれからの暮らしに安心と心の余裕をプラスしてみませんか?